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使える&使うべき制度―民法特例(除外合意)

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経営承継円滑化法の一環として遺留分に関する民法特例という制度ができました。
これがどういう制度なのか簡単に説明します。

01遺留分とは
人は、自らの財産を自由に処分することができるはずですが、民法は、相続人の生活の安定や最低限度の相続人間の公平を確保するために、兄弟姉妹及びその子以外の相続人に最低限の相続の権利を保障しています(民法第1028条)。これが「遺留分」です。被相続人による財産の処分によって、遺留分を侵害された相続人は、遺留分の額以上の財産を取得した相続人に対して、財産の返還を請求することができます(民法第1031条)。これが「遺留分減殺請求権」です。
また、生前贈与された財産を遺留分算定基礎財産に算入すべき価額は、すべて相続開始時を基準に評価された価額となりますので、後継者が生前贈与を受けた自社株式の価値が、後継者の努力によって被相続人の相続開始時までの間に上昇した場合には、後継者以外の相続人の遺留分の額が増大する結果となってしまいます。
後継者が先代経営者からの贈与等により取得した株式等は、その贈与がいつ行われたものであっても、民法の規定によれば、「特別受益」としてすべて遺留分算定基礎財産に算入され、原則として、遺留分減殺請求の対象となります。(「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」中小企業庁財務課より抜粋)
つまり、後継者の努力により価値が増加した株式は、遺留分を増大させ、そのため後継者が他の相続人から莫大な遺留分を請求されることになるのです。自分の努力した結果が、自分の首を絞めるというおかしな制度が民法にあるのです。
この矛盾を解消するために設けられた制度が民法特例なのです。
除外合意と固定合意があります。制度として実際使われるのは、除外合意だと思いますので、ここでは除外合意を説明させていただきます。
02除外合意とは
除外合意とは何でしょうか?さきほど説明したように、生前贈与された自社株式の価値が上がれば、遺留分の価額も上昇します。そこで、この生前贈与された自社株式を遺留分の算定基礎から外してしまえば、遺留分の減殺請求の対象にならなくなるというのが、除外合意です。
この除外合意を受けることができれば、後継者の方は自分が頑張って価値を上げた自社株式の価値は自分で享受でき、遺留分の算定基礎から除外されるという効果が得られるのです
03どういう場合に除外合意を申請するのか
もちろんご兄弟の仲がよく、相続に関してもめ事の起きないところは除外合意など申請しなくて構いません。話し合いで解決すれば済むからです。
しかしそんな円満な家族ばかりではありません。相続人にはそれぞれ配偶者がついているから、話しはこじれるのです。

例えば、兄妹2人で、兄が自社株を父より生前贈与され、その後努力して自社株の評価額を何百倍も増加させ、父が亡くなった場合、どういうことが起きるでしょう?妹のご主人が遺留分について知人から聞いてきました。
主人 妹
主人: 「おまえの兄さんの会社、かなり儲かってるみたいじゃないか。あの会社の株式は、生前にお義父さんから兄さんがもらったものなんだよな?」
妹: 「そうよ。兄さんが生前にもらったものだから、相続財産ではないはずよ。それに生前贈与されたときには、あの会社は小さくて、価値もほとんどなかったみたいだし。」
主人: 「ちょっと知り合いの弁護士に聞いたんだけど、特別受益の持ち戻しってのがあって、生前にもらった株式でも現在の価値で遺留分に算定するみたいだぞ。今、あの会社の株価はかなり上がってるんじゃないのか?」
妹: 「え!本当?この前、兄さんがこぼしてたけど、税理士さんに算定してもらったら、会社の時価総額は何10億になってるんだって。自分から息子への相続が大変だって言ってたわよ。」
主人: 「それじゃ、特別受益の持ち戻しってので、遺留分を算定すれば、すごいことになるぞ !」
妹: 「そうよね。その分、私は兄さんに遺留分を請求できるってことでしょう?兄さんちは会社も儲かってて羽振りがいいけど、私は株もなくて役員でもなかったから何の恩恵も受けてないもんね。その弁護士さんに相談して、請求してもらいましょうよ !」
主人: 「わかった。さっそく明日にでも頼んでみるよ。」
以上のような会話は、珍しいことではありません。どこの中小企業経営者の家庭でも起こりうることなのです。遺留分を請求されたお兄さんはたまったものではありません。自分が苦労して大きくした会社なのに、何も関係ない妹から遺留分を請求されるわけです。それも莫大な金額になる恐れがあります。このようなことを避けるために生まれた制度が、この除外合意なのです。
除外合意を受けるためにはどうすればいいのか?
除外合意を受けるためには、先代経営者の推定相続人全員の合意を前提とし、経済産業大臣の確認及び家庭裁判所の許可を受けることによって、その効力が発生します。
簡単に言えば、生前贈与された非上場株式について、相続人全員の合意のもとに経済産業大臣の確認を受け、家庭裁判所の許可を受ければいいということです。ここでポイントとなるのは、先代経営者である父親が元気なうちに、相続人全員の合意を取り付けることです。父親が病気などになってしまってからでは、遅いのです。言い方を変えれば、父親の威光のあるうちに、合意を取り付けてしまうことです。
どのようなケースが対象になるのでしょう?すべてのケースが対象になるわけではありません。先代経営者(旧代表者)及び後継者に適用対象とされる要件があります。それぞれについて説明します。
(1)先代経営者(旧代表者)の要件
①特例中小企業者の代表者であった者(代表者である者を含む)
②推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者のうち被相続人の兄弟姉妹及びこれらの者の子以外の者に限る)のうち少なくとも1人に対して特例中小企業者の株式等(ただし無議決権株式を除く)または持分の贈与をしたもの
(2)後継者の要件
①先代経営者(旧代表者)の推定相続人であること
②先代経営者(旧代表者)から当該特例中小企業者の株式等の贈与を受けた者
③単独で総株主または総社員の議決権の過半数を有していること
④除外合意をする時点において、特例中小企業者の代表者であること
以上が除外合意を受けるための先代経営者及び後継者の要件です

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